大判例

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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)1314号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

「1 控訴人

(一) 原判決を取消す。

(二) 被控訴人は、控訴人に対し金四〇〇万円及びこれに対する昭和五七年六月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」

【判旨】

一請求原因1ないし3の事実及び同4の事実中、被控訴人が、昭和五七年五月二九日に支払うべき手附金残金四〇〇万円を支払わなかつたことは、いずれも当事者間に争いがない。

二控訴人は、被控訴人の右手附金残金四〇〇万円の不払いを理由に、本件売買契約を解除したから、被控訴人において、約定手附金五〇〇万円から既に受領の金一〇〇万円を控除した残金四〇〇万円を支払う義務があると主張するので検討する。

右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、被控訴人は、住宅新聞で本件不動産及び仲介業者豊中住研を知り、右住研に対し右不動産を購入したい旨申入れたが、右住研がその所有権を明らかにしなかつたので、この購入を断念する旨話したところ、昭和五七年五月二五日、右住研の者において、その所有者が控訴会社であることを告げて被控訴人を控訴会社に案内し、被控訴人と控訴会社代表者との間で、右不動産の売買代金等について協議したが、同代表者が、今日中に契約書を作成しないと右不動産を売却しないといつてその作成を急いだので、その売買代金を五五〇〇万円、手附金を五〇〇万円とすることとし、右売買の手附金として右同日金一〇〇万円、同月二九日追手附金四〇〇万円を支払う(契約書第二項)、同年八月二日売買代金を支払い、右手附金は売買代金に充当する(同第三項)、被控訴人が本契約の履行をしなかつたとき、控訴人は手附金を没収する(同第七項)旨の条項を含む本件売買契約を締結し、被控訴人において、印鑑を持参していなかつたので、右の契約書買主欄に署名し、指印を押捺のうえ、右同日、持参にかかる額面金一〇〇万円の小切手を控訴会社代表者に交付したが、その後右不動産の立地条件等を考慮してその購入を躊躇し、同月二九日までに追手附金とされた金四〇〇万円を支払わなかつたところ、控訴会社は、右手附金四〇〇万円の支払義務の不履行を理由として、本件売買契約を解除したことが認められ<る。>

ところで、不動産売買契約の締結に際し、買主から売主に対して手附金名目で金銭の授受が約され、ないし、その授受が行われる場合、特段の意思表示がない以上これを解約手付と解すべきところ(民法五五七条一項)、前認定のようは本件売買契約締結の経緯によつても、右特別の事情を認めることができないから、本件においても、右の趣旨の手附と認めるのが相当である。そうすると、控訴会社との被控訴人間において、売買代金の約一〇分の一とされた手附総額金五〇〇万円を、本件売買契約における解除権留保の対価とすることの合意がなされたと認められ、これが当事者の意思に合致するものというべきであるが、手附契約が金銭等の交付により成立する要物契約であることを考慮すると、前示のように、昭和五七年五月二五日、本件売買契約が締結され、これに従たる総額五〇〇万円とする手附に関する合意がなされ、被控訴人から金額一〇〇万円の小切手が控訴会社に交付されているけれども、右総額五〇〇万円についての手附契約としては未だ成立するに至らず、むしろ、同月二九日までに右全額を交付する旨の手附の予約がなされたにとどまるものと解するのが相当である。そうすると、控訴会社の被控訴人に対する右金四〇〇万円の請求については、右手附総額五〇〇万円につき手附契約がそもそも成立していないのであるから、その前提を欠くというべきであり、したがつて、交付のなし手附金の没収ないし支払請求をする根拠がないことに帰着する。なお、控訴人は、手附の予約でなくその成立があるとし、右手附金の支払いを分割したにすぎないというけれども、手附の要物契約性を無視するものであつて採用することができない。

三してみると、控訴人の本訴請求は、既にこの点において失当であるから、これを棄却した原判決は相当であつて本件控訴は理由がない。

(大野千里 田坂友男 稲垣喬)

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